家具屋の鈴木さんに連れられ、鈴木さんの店の前まで来ると、その横の邸宅は確かにモ○ダー宅であるようだった。何故、そう分かったのかと言うと、その表札には「宇宙人科学研究所」と書かれていたからだ。
【このヒューマン、月之助と発想が同じだぁーーーー!!!!!】
ブルーは心の中でそう叫んでいた。だが次の瞬間、モ○ダーが月之助よりも一枚上手だと言うことを思い知らされる。何故なら玄関の扉には「韮沢○一郎」氏のポスターが貼ってあったからだ。
「とぉーつげきーーーーッ!!」
月之助の勇ましいかけ声と共にカグヤメンたちはなだれ込むようにモ○ダー宅へと侵攻を開始した!!今、最後の決戦の幕が上がったのだ!!
「飛んでファイヤーにインする、サマーのインセクトだな」
モ○ダーは自室でブルーバリの怪しい日本語で日本の格言を語りながら、玄関に備え付けてある監視カメラの映像を見ながら、そうほくそ笑んだ。
部屋に入るとそこにはモ○ダーを慕う、宇宙人科学研究所職員が待ち構えていた。その数、5人。
「覚悟しろ! 全員地獄へ送ってやる!!」
その5人を指差し月之助はそう、挑発するように叫んだ。どっちが敵役か分からなくなるような台詞だ。もう、何度も言うのも段々面倒くさくなってきたが、イチイチ暑苦しい。
「へんしぃぃぃぃぃんーーーにゃぁおうぃんッ!!」
またしても、語尾のおかしい奇声を発して、カグヤメンはルナティックフォース(今考えた。)を放出して、ルナティックパワースーツ(今考えた。)を身にまとい、レッド、ピンク、ブルーへと変身して、職員五人を迎え撃つ。
敵は強かった。否、カグヤメンは弱かった。これも、これで二度目の説明となるが、カグヤメンは月という地球の1/6の重力で育ったため、その体はすこぶる弱い。戦隊とは名ばかり…というか、戦隊という名前もノリで付けたものなので、いたしかたない。
「クッ…!! 」
仮面で顔は分からないがレッドはそう苦渋を込めたであろう言葉を漏らす。
5人の職員が「イーッ!」と言いながらレッドを囲み込もうとしたその時だった。
「Don't touch !!」
そう、言ってレッドを掴もうとする職員の手を掴む屈強な黒人が現れた。
「間に合ったみたいですねー!」
ブルーはその黒人を見て、そう声を上げた。すると、「大丈夫デスカ?」とブルーの体を起こそうとするもう一人の屈強な男(こちらは白人)もいることに気付く。
「もしもの事を考えて、召還獣をコールしておいて正解でしたー! さぁ、レッド、ピンク! ここは私とイザナギとイザナミに任せて先にゴーしなさーい!!」
イザナギとイザナミと呼ばれた二人の外人はマッスルポーズを取る。召還獣と呼ばれたが、もちろん彼らは幻獣などではなく、ただのブルーのSPだ。
「ありがとう! ブルー!!」
そう言ってレッドとピンクは職員のスキを突いて、先へと進んでいた。その後ろを何故か鈴木さんが後を追うように走って行った。
「グットラッグ!」
ブルーはそう親指を突き出して二人を見送った。
走りながらレッドは思っていた。「ブルーは本当にマフィアのボスだったんだな…」と。レッドはちょっとだけブルーのことを疑っていた。
しばらく進むと、研究室のようなところに出た。そこはUFOのポスターやらグレイタイプの宇宙人の人形が立ち並ぶ、いかにもと言った感じの部屋だ。
「レッド…ここは…」
「あぁ…間違いない…ここはモ○ダーの研究施設の核となる部分だろう。」
「…怖いわ」
「大丈夫。僕がいるよ…ピンク」
ブルーがいなという二人っきりのシチュエーションをピンクが逃す筈が無かった。ここぞとばかりに猫撫での声を上げレッドに寄り添う。しかし、ピンクの思惑は思わぬ人間に妨害される。
「あのー…」
二人の後ろからそう声が聞こえる。ハッとして振り返るとそこには、鈴木さんがいた。
「鈴木さん!? どうしてこんな所にまで…!」
「いや…私はこの家に入る前からずっと居ましたけど…」
ピンクの問いに、ボソボソと鈴木さんは答える。
「という事は、まさか変身シーンまで見られてしまったのか…!! しまった! ヒーローの正体は秘密がセオリーだと言うのに!!」
そういってレッドは頭を抱え苦悩する。もはや暑苦しいを通り越して鬱陶しい。
「…そんなことより…モ○ダーがあそこに居ますよ」
鈴木さんはそう言って部屋の奥を指差す。
するとそこには、こちらに背を向けた状態の、社長イスのようなVIP使用のイスがあった。
「フフフ…。良く来たねカグヤメン。前回は熱海温泉という思わぬ伏兵に遅れを取ったが、今日こそは君たちから、私の妹の居場所を教えてもらうよ。」
そう言って、モ○ダーはくるりと振り向いた。もはや、作者がルー語翻訳機にこんな長い台詞を変換かける事が面倒くさかったかのような、流暢な日本語だった。しかも、レッドとピンクの間に起った筈の恋愛フラグを一切無視したその台詞は、戦隊SFものとして、ドラマをものの見事に軌道修正してみせた。
「…これ以上、誤解だと言ってもあなたは信じてくれないでしょう。…いいだろう! 決着をつけようモ○ダーくん!!」
レッドはまるでスポーツマンガの主人公がライバルに語るような台詞を叫ぶ。やはりイチイチ…もういいや。
「望むところだ! カグヤメン!!」
モ○ダーもそれに乗っかった。そして今、最後の戦いが始まる!!
次回、怒濤の最終回! カグヤメンは勝てるのか!? そしてピンクの恋の行方は? お楽しみに!!